骨粗鬆症、がんや炎症による骨破壊、続発性骨粗鬆症における骨質異常、異所性骨化のメカニズム解明、骨の治癒修復促進療法の開発などを行っている。臨床で生じた疑問を科学的に解明するリバーストランスレーショナルリサーチや、基礎研究で得られた研究成果を診療に結びつけるトランスレーショナルリサーチを行っている。 整形外科の診療対象の大部分が骨に関係する疾患であることから、当グループで研究した大学院生の多くは骨代謝の知識を活かしたキャリアを形成し、活躍している。
破骨細胞表面のシアリル糖鎖およびそれを認識するSiglec-15が破骨細胞の最終分化を制御することを発見、骨粗鬆症の有効な治療標的であることを報告してきた。
テリパラチドによる骨修復促進療法を臨床応用(適応拡大)するための基礎研究や乳歯歯髄由来幹細胞を用いた難治骨折や骨壊死に対する骨再生誘導療法(キッズウェル・バイオ株式会社との共同研究)に関する研究を行っている。
図:放射線照射によるラット難治骨欠損モデルにSHED(乳歯歯髄由来幹細胞)を移植すると骨修復が促進される。
グルココルチコイドや関節リウマチ、慢性腎臓病による易骨折性発症メカニズムや、それに対する適切な治療法に関する研究を行っている。ヒト生検骨サンプルや動物疾患モデルを用いて、骨形態計測やバイオメカニクス、光学、物理工学など多面的に骨の材質異常と骨脆弱性の関連を検討するととくに各種骨代謝改善薬による治療効果を明らかにしてきた。
図:ヒト腸骨海綿骨生検サンプルのマイクロCT画像。左は長期間ビスフォスフォネートで治療してもグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症患者の骨は、右の健常者と比べて骨梁が細く、構造が粗であることを示している
図:ラマン分光イメージングを用いた慢性腎臓病モデルラット大腿骨の骨質異常解析。慢性腎臓病ラットの骨は石灰化度が低下するが、Alendronate (ALN)やTeriparatide(TPD)を投与すると改善する。
脊柱靱帯骨化症など異所性骨化の発症メカニズムに関する研究を行っている。理化学研究所とのゲノミクス研究や動物モデルを用いた研究などを行っている。
図:脊柱靭帯骨化症の発症に関与する8つの新規遺伝子座を発見
図:ENPP1 ttw/ttwマウスを用いた研究で、ピロリン酸を増加させるALP阻害薬LevamisoleやRARγ選択的アゴニストは異所性骨化・石灰化を抑制できることを示したが、同時に全身骨の骨軟化症が生じる可能性があることを報告した。