研究と業績
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臨床研究部門

脊柱班

脊柱班
脊柱班

研究紹介

脊柱班は、これまで世界をリードしてきた脊柱再建手術(頚椎変形、側弯症など脊柱変形に対する矯正固定手術)を中心に、高難度とされる腫瘍脊椎骨全摘出術や胸椎後縦靭帯骨化症手術、頚椎後縦靱帯骨化症前方除圧固定術も行っており、これらは国内有数の実績を有しています。神経症候学や画像診断などの診断学、根拠に基づく治療法選択、および手術の安全性や確実性を重視し、さらに顕微鏡や脊椎全内視鏡、経皮的椎弓根スクリューを用いた手術の低侵襲化、術中CTやナビゲーション、3次元患者立体模型ガイドなども積極的に取り入れ、個別化医療、精密医療を提供しています。



1.頚椎変形

難易度の高い頭蓋頚椎再建手術における確実性、安全性向上のための技術開発を行っています。頭蓋頚椎再建手術は、難易度の高い手術であり、治療可能な施設は国内でも限定されています。インプラント設置技術の開発や解剖学的研究によって手術のリスクを軽減し、安全かつ確実な手術技術の確立を目指した研究を行っています。

椎弓切除後後弯変形に対する前方、後方矯正固定術

図:椎弓切除後後弯変形に対する前方、後方矯正固定術




2.脊柱靭帯骨化症

特に難易度の高い胸椎後縦靱帯骨化症による脊髄障害に対して、世界でも有数の治療経験を有しています。安全性を担保しつつ、治療成績を向上させることを目的に、術式選択の最適化に関する研究を行っています。

脊柱靱帯骨化症は複数の遺伝的素因に環境因子が加わって発症する多因子疾患と考えられており、その発症や進展に関わる遺伝的素因や環境因子の探索的研究、手術治療法の向上・合併症低減に関する研究を行なっています。遺伝的素因については、理化学研究所と共同で厚労省研究班研究プロジェクト“胸椎OPLLのゲノムワイド関連解析”を主導し、新たな遺伝領域の同定に成功しています。また靭帯骨化症の発症あるいは進展に肥満が関わることを明らかにしており、病態解明や治療法開発の糸口になると期待されています。

頚椎後縦靱帯骨化症に対する術式アルゴリズム

図:頚椎後縦靱帯骨化症に対する術式アルゴリズム

頚椎前方除圧固定術

図:頚椎前方除圧固定術




3.脊柱変形

特発性側弯症の術式改良や診断法の開発を中心に行っています。矯正手術では、冠状面の矯正に加えて、生理的な矢状面アライメントを獲得するための術式改良やプリベンドロッドの開発に成功しています。また医療機器「SCOLIOMAPスコリオマップ脊柱側弯モニタ」の開発や人工知能プログラムにより側弯症を高精度に自動計測するシステム開発にも成功しています。

脊柱変形矯正手術は、整形外科の中でも最も難易度の高い手術のひとつとして位置づけられております。当施設は、脊柱変形疾患における代表的疾患である、思春期特発性側弯症について世界的に有名な治療施設の一つに挙げられており、その優れた臨床成績について、世界的に評価の高い英文雑誌に論文を数多く発表してきました。現在は従来の治療法で問題となっている「内固定金属の折損・変形、ひいては矯正損失」を解決するべく、産学連携、医工連携の多面的アプローチにより、矯正損失の極めて少ない新たな治療法の確立に取り組んでいます。




4.骨粗鬆症関連脊椎疾患

高齢患者の増加によりますます需要高まる骨粗鬆症患者の脊椎再建手術では,低侵襲かつインプラントの固定性を増強させるような工夫として、経皮的椎弓根スクリューを補強するための人工骨「アパセラム for PPS」の開発を企業と共同で進めました。 画像解析や物理化学、材料工学、動物モデルなどの研究手法を用いて、ステロイドによる骨質異常と骨の力学的特性の変化に関する研究を行っています。また、移植骨治癒と各種骨代謝改善薬の影響に関する研究についても多数の研究実績があり、基礎的な理解に基づいた補助療法に関する研究も行っています。

“骨粗鬆症関連脊椎疾患




5.脊椎腫瘍

がん治療のパラダイムシフトに対応すべく転移性脊椎腫瘍に対する治療に関する研究に取り組んできました。2018-2021年まで転移性骨腫瘍治療予防学寄附講座を開設し高畑准教授と岩田特任助教(現北海道がんセンター骨軟部腫瘍科医長)を中心に、転移性脊椎腫瘍の早期発見や集学的治療における手術治療の役割や効果,術式の工夫に関する研究を行なっています。

脊椎腫瘍




6.脊椎低侵襲手術・脊椎全内視鏡手術

腰椎椎間板ヘルニアに対する脊椎全内視鏡によるヘルニア切除術や、内視鏡による脊椎感染症治療および変性疾患に対する内視鏡と経皮的椎弓根スクリューを併用した脊椎固定術を行っています。また、低侵襲手術アプローチに基づいた3次元的な画像解析および研究を行い、手術の安全性の確保およびトレーニングに活用しています。

脊椎低侵襲手術・脊椎全内視鏡手術




7.脊椎感染症に対する新しい治療戦略の確立

低侵襲な脊椎内視鏡手術を脊椎感染に応用することで、全身状態が不良な患者に対する治療成績を大きく向上させることに成功しています。また、核医学講座や感染制御部と連携し、PET-CTによる活動性感染巣の同定や抗生物質治療の最適化研究で成果をあげています。

脊椎感染症に対する新しい治療戦略の確立

北大整形外科脊柱班は、脊柱再建手術の分野で世界をリードし、国内外で活躍する多くの医師を輩出してきました。頚椎変形に対する頚椎椎弓根スクリューシステムを用いた頚椎再建術や、胸腰椎前方脊柱再建手術は当診療班発の世界的業績として評価されています。

国内トップレベルの臨床に加えて、スタッフの多くは平行して基礎研究も行い、病態解明や新規治療法開発をおこなっています。

脊椎脊髄外科医を育成するSubspecialty研修プログラムにも力を入れており、北海道せき損センターや函館中央病院、国立病院機構北海道医療センターなど全国でも有数の症例数を誇る関連病院をローテートすることで幅広い経験と指導が受けられる体制を構築しています。


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